苦くて甘い恋愛中毒
「見れば見るほど、本当にお綺麗な方ね。羨ましいわ。ねぇ、要もそう思わない?」
話が突然、隣にいた男へと振られる。
今日、初めて私の目を見た。
いつもとは違う仕事モードの彼に、まるで本当に初めて会ったかのように、要が遠い。
「あぁ。相変わらずだね」
いつもと全然違う表情で。
いつもと全然違う口調で。
本心かどうか分からない言葉を口にする。
一応は称賛の言葉をもらったのに、どうしてかすごく虚しかった。
「…って、要。金村さんと知り合いなの?」
「べつに、知り合いって程度のものでもない」
ささやかな疑問をぶつけた彼女に、まるで何事もないかのように答える。
あぁ、そう。
要にとって私は、そんなに簡単にかわされる程度の存在だったんだ。
付き合っているとは言いつつも、公にそれを打ち明けることのない存在。
分かっていたはずなのに。
期待なんてしてなかったのに。
ひどく傷ついている自分がいる。
どうしよう、泣きそう。
涙が込み上げてきそうだった。
それでも堪えて、もう一度笑顔を作り直す。
大丈夫。
無理矢理涙を押し込むのも。
何事もなかったように平然と笑うのも。
この3年半で培ってきた私の得意技だ。