苦くて甘い恋愛中毒
選択
いつまでもここに閉じこもっているわけにもいかず、渋々パーティーへと戻ろうとしたとき、どういうわけか会場の前には、すでにコートを纏った五十嵐さんの姿があった。
そして、彼の右腕には私の荷物とコートまでもが収まっている。
「……五十嵐さん? どうしたんですか?」
私のその質問には答えず、ただ帰ろっか、と告げた。
「菜穂ちゃん、なんか様子おかしかったし。オーナーたちには挨拶しておいたから大丈夫だよ」
彼はどうしていつも、私がつらいときにばっかり来るのだろう。
優しい言葉をかけるのだろう。
そんなふうにされると甘えてしまう。
弱さを、見せてしまいそうになる。
「ありがとう、ございます……」
直接顔を見れなかったから、俯きながら礼を言う。
連れ出してくれて、助けてくれてありがとう。
――やっぱり私は最低だ。
これじゃ彼を利用してるだけじゃない。
エレベーターを待ちながら、私は口を開いた。
「さっきはありがとうございました。理由は言えないけど、本当に助かりました。でも、もうこんな風に優しくしないでください。……甘えてしまいそうになるんです」
やっぱり、顔を見ることはできなかった。
そんな私の顔を覗き込みながら、いつもの人懐っこい笑顔を見せる。