苦くて甘い恋愛中毒
「で、どうだったのよ? 昨日、例の男と久々に会ったんでしょ」
リーズナブルかつ社内の人も少ない、まさに穴場な定食屋は入社当時からの私たちのお気に入りだ。
お茶を啜りながら一息ついたところで、何の前触れもなく直球で切り出してきた。
連絡があったことも。
要と会ったことも。
退社した後のことで知らないはずなのに、どうしてこうもこの女は勘が鋭いのだろうか。
「別にわざわざ聞かなくても分かるわよ。寝不足みたいだし、陰気なオーラ漂わせてるし」
人の心を勝手に読むなと突っ込みたいが、どうせうまく言いくるめられるだけだろう。
余計な体力は使わないに限る。
「別にどうもこうもないわよ。呼び出されて、ご飯作って家事やって……抱かれただけ」
ありのままの事実を口にする。
この女の前じゃ、取り繕ったって無駄だ。
どうせ、すぐに見破られるのだから。
「ふーん。相変わらずいいように使われてんのね」
「別にそんなんじゃ……」
「へぇ? やる事やって、ヤることもヤッて、朝起きたらもぬけの殻で、じゃまた、ってこれのどこが都合のいい女じゃないって言えるの?」
ストレートな言葉がぐさっと胸に刺さる。
自分でも気づいていながらあえて目をそらしていたところに、容赦なく塩を塗りこんでくるのが米沢理恵という女だ。
「もっと上手いことやりなよ。なんであんたって恋愛になるとそうなのよ」
そんなの、私が聞きたい。
要に出会う前、私だってそれなりに恋愛はしてきた。
この人がいないと生きていけないって思うほど情熱的な恋愛ではなかったかもしれないけど、愛して愛されてうまくやってこれたのに。