苦くて甘い恋愛中毒
「俺は全然甘えてくれて構わないんだけど」
え? おもわず顔を上げると、ほんの少し彼の表情が変わった。
「好きな子に甘えられて嫌がる男なんていないでしょ。それに、俺が勝手にやってることなんだから、菜穂ちゃんが罪悪感感じることなんかない」
は? 好きな子?
……って、私?
意味が分からないという風にぶんぶんと首を振ると、菜穂ちゃんて意外と鈍いよね、と笑われてしまった。
気づいてもらえるように結構頑張ってたのに、と。
動揺している私を見て、明らかに楽しんでいるんだろう。
いつもいつも、なんでそんなに唐突なの!
「でも菜穂ちゃん、好きな人いるんでしょ?」
何で知ってるの。
顔に出ていたのか、一瞬微笑んだ後、理恵ちゃんに聞いた、と驚きの言葉を口にする。
でも、その情報源を聞いて妙に納得がいった。
理恵はきっと、五十嵐さんにあえて彼氏とは言わなかったのだ。
そこがいかにも理恵らしくて、思わず苦笑してしまった。
「……もう3年半です。いつかはって思ってたけど、ここらが潮時なんですかね」
自嘲気味に笑ってみせる。
本当に、潮時なのかもしれない。
でも、自分からあの手を手放すなんて、そんなこと私に出来るんだろうか。