なまけもの
「はーい」


やっと出るのか、遅い上に客を待たせるなんていったいどんな教育を受けたのだろう。きっと劣悪極まりない廃れた環境での教育だったのだろうな。

生体エネルギーを惜しみなく発生させつつも居留守に洒落込もうだなんてどれだけ傲慢なんだ。


あのかたもこんな下賤な環境に身を置いているからには相当な穢れが溜まって居られるやも知れない。

苛々と組んだ腕を人差し指でとんとんと叩く。
眉間に刻まれた皺は深く、なんともいえない威圧感を放っていた。
上のほうでは知らぬ者などいないそこそこ偉い存在の彼は、更に偉い存在の執務放棄を咎めつつ穏便に連れ帰ることを他の連中に指図され、苛々と俗世なんかに降りて来たのだ。


上のほう(すなわち天界みたいな所だが)は放蕩癖のある最高責任者がしょっちゅう脱走を図るので毎度毎度大混乱に陥っている。上も下も株価は下がるし景気が悪くなれば治安も悪くなるという嫌なこと尽くめだ。
いいじゃーんとケタケタ笑う上司を敬いつつ何本か目のナイフを叩き付けた。もちろん心の中で。


なんであんなのに絶対服従してるんだろう
穢れが溜まってたら適当な理由つけて捨てようか。


うろん、と嫌味に青い空をねめつけた。

上司と反転したような黒い髪が視界の端で風に遊ばれている


嗚呼、帰りたい。


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