なまけもの


「はーい、ちょっと待っててくだ…うぜぇ離れろ零こなくそっ…さーい」


ぱたぱたと玄関に走り寄り、往生際悪く自身にしがみついている零を蹴り飛ばし、チェーンを付けたまま扉を開け、



ぱたん。



そして閉めた。
次いで慌てて鍵を閉めると、聖は零に向き直った。

「何あれ誰あれ怖いよ怖いよ若干細身だったけど絶対ヤが最初にきて真ん中にクがきて最後にザがつく人だよ怖いよ怖いよ怖いよ怖いよ」


あわわわわと聖は零の胸倉を引っつかんでがくがくと前後左右に揺さぶる。

と。

今度は零がテンパり出した。

「ひぎゃぁぁああ!!奴だ!奴が来たんだいやあああああ!!!!」


揺さぶられたまま自身の頭を抱え込み情けない悲鳴を上げだす始末。


一瞬にしてリビングと玄関を繋ぐ廊下は阿鼻叫喚、地獄の様と為った。


そして、


バァン!と破裂音に近い破壊音がして、玄関の扉が開いた。

アレ、外開キジャナカッタッケ?
ぴたりと動きを止めた聖の脳内にそんな台詞が全力疾走している。


反射的に見てしまった光景は、外開きの筈の扉が内側に開いて、玄関の壁に立て掛けてあった姿見を粉砕して壁にめり込んでいる姿。と、何かを蹴り飛ばしたような、そんな体制をとるスーツの方でした。

BGMを流すとしたら、十人中十人がダー○ベー○ーのあのテーマを選ぶだろう光景に、聖は引き攣り笑いをするしか無いのだった。


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