なまけもの
聖に零を追い出すことが出来る権限が無い、というのは
聖の両親が強行して決定した事柄は、両親が撤回しないと絶対的に撤回出来ないのだ。
「…うまー。」
「当然だけどネー」
まぐまぐうまうま、朝の光景とは取って代わり、聖は幸せそうに玄米ご飯を咀嚼する。
聖のお気に入りはやわく解れる皮と身の間がとろとろおいしい零特製鯖の味噌煮だ。
骨無し魚などが流行る今でも零は普通の魚を使う。
なんでも零曰く、
『魚は身と皮の間、そして骨の周りが美味しいんだよ』
とのこと。
始め面倒臭がった聖も、そこだけは異様に頑張るようになった。
今ではそこまで苦に成らない様子で淀み無く箸を動かしている。
ふ、と聖は顔をあげ、向かいに座る零を見た。
ふわふわとした白銀の髪は以前触った(はたいたとも云う)ときも柔らかでふもふもしていて、その性格と比較すると物凄く浮いたものだったが、綿菓子みたいにふわふわ揺れるのを見るのは嫌いではない。
今はふわふわ髪を揺らしながらほうれん草のおひたしに箸を伸ばしているが。
「んぁ?」
視線を感じたらしい零が顔を上げバッチリガッチリシッカリと目があってしまったが構わずそのまま零の顔を見続けた。
ぱちくり、と訳も解らず観察されつづけるはめになった零は紫色の目を瞬いた。
そして何故かじわじわと瞳に喜色をうかべた。
「あー!やっと僕が神様だっ「信じてない信じてない」
何故そういう運びになったか全く解せないが零の(阿呆で)見当違いな戯言を一笑に付して、目を反らすとまぐまぐうまうま、晩御飯を再開したのだった。