おにんぎょさん
[先生の物じゃないけど…大切な人形なの。]
大切な物という言葉にクラスが反応する。
年頃の中学生が聞く言葉は大体の予想はついていた。
[先生、もしかして彼氏から──?]
田中君が聞く。
HRの終了時刻は4時10分。
それをもう知っているはずなのに、田中君はそれを気にせず先生に聞く。
───本当、自己中な奴…
そう思ってイライラしているのは莉子だけで、他はみんな先生の次の言葉を楽しみにしていた。