今宵の月は美しい【完】
こんな奴の言うこと、適当に聞き流せばいいのに。

「頼子に恩売ろうと思ってテキトーに言っただけなのに、ちょっと悪いことしたと思った」

「あんたでも、悪いと思うことあるんだ」

それがびっくりだ。

「そ。でも思わなきゃ良かった。
最近寝てるとはたいて起こしやがる…。
やっぱり良い先生なんていない」

それ私怨入ってるけどね、たぶん。

昼休みにこんなことしてるのわかったら、はたくだけじゃ済まないよ。これもたぶん。


中鉢もバカだ。

これが私を、まともに異性として相手にするわけがないではないか。

私のこと、人の言葉を話す愉快なパンダかなんかだと思ってるよ。

「お前、梨沙に会ったら言っとけよ。
あんまりベタついてると、飽きられるの早いぞってな!」

「そんなんあんただけでしょ。
自分で皆本に言えば?」

私、学校で梨沙と話してるところを、他の子に見られたくない。

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