今宵の月は美しい【完】

※scene10『修羅場とは遠きにありて思ふもの』

ぐすん。

ついてない。
なんてついてないんだろう、私。


保健室のベッドは消毒液みたいな、あんまり好きじゃない匂いがする。

何度も立ち止まってはしゃがみ込む私を根気よく励ましながら、ここまで手を曳いて連れて来てくれたのは、陣野さん。

途中でチャイムが聞こえたから、陣野さんきっと5限の授業間に合わなかったよ。

明日謝って、お礼しないとなぁ。


お昼のパン、全部吐いちゃった。
貧血なんて初めてなった。

「ヨリちゃんどぉー?」

あれ、戸川ちゃんいつ戻ってきたんだろう。

「ちょっと出てくるけど、すぐ戻るからね!」、と言い残しいなくなってから、あんまり経ってはいない気がする。

シャッとカーテンが開いた。

「平気です。
お仕事増やしてごめんなさい」

戸川ちゃんは私の寝ているベッドに腰をおろし、悩ましくミニスカートの足を組んだ。

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