今宵の月は美しい【完】
※scene12『たくさんの恋文を』
もうすぐ、私がこの高校で受ける最後の授業が終わります。
そうと決めたら、なんだか寂しいような気もする。
完全アウェイなつもりでいたけど、あれ以来なんだかんだと、陣野さんは話しかけてきてくれる。
内容が中鉢のことだから、ちょっと胸が痛い。
私は頬杖をつき、みんなと一緒に黒板の前に立つ中鉢を見てる。
みんな、知らないだろ。
この生徒指導の先生さ、布団の中だと豹変して、獣みたいになるんだぜ。
「夏目漱石は近代文学だから、これは雑談になりますが」
今はこんな綺麗な日本語で話してるけど、高校生が知らないような卑猥な言葉で、いつまでも私を攻め立てるんだぜ。
でもね、私は大好きなの。
この先生も、私のことが大好きなの。
照れてるのか、未だにそう言ってはくれないけどさ。