今宵の月は美しい【完】
あなたの腕の中で見る月は、とても綺麗。


意味がわかったら言ってみたくて、私はすぐそばにある彼の頬を撫でた。

中鉢はそれを聞いて動くのを止め、大きく熱い息を吐いた。


それからクラスのみんなは知らないことを、腕の中の私だけに教えてくれた。

「漱石はそう言ったんだけど、もうひとつ教えてあげる。
I LOVE YOUを初めて日本語にした人は、『死んでも可いわ』。そう訳したんだ」

「死んでも、よいわ!」

な、なんだって!?

愛してるって言葉が地球上から消えちゃっても、これで大丈夫。

私の気持ちは無くならないで、言葉にできる。

中鉢の与えてくれる気持ちよさと安心感に、私は倒錯する。


今日の月はどんな様子なのやら。

お化け屋敷の薄闇の中、私が死んでも可いわの相手は薄く笑った。

「ただ愛してる、よりも粋じゃない?」

「ヤバい!」

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