今宵の月は美しい【完】
喫茶店で、二人は向かいあっていた。

なんだか、ママと中鉢が付き合ってるみたいだ。
そっちの方が年も近いし、普通に見える。

「良かったね、頼子。幸せになってね」

うん、そうするよ。
別に今までも不幸じゃなかったけどさっ。

「ママもね!」

「うん、元気でね」

喫茶店を出て、今日からはママと帰る場所が別になる。


ママに抱き締められるのは、いつ以来なんだろう?

何か言わないといけない気がしたんだけど、中鉢がなんだか機嫌が悪いように見えて、ゆっくりもしていられなかった。

ママはもう一度私に「元気でね」と言って、中鉢に頭を下げ、行ってしまった。

「…なに怒ってんの?」

ママなんかした?

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