今宵の月は美しい【完】
混乱する私は、人混みの中で頭を抱き寄せられた。

「!?…昼間!ここ公道!!」

イチャついたら、ダメな場所だってば!

中鉢はお構いなしで、ジタバタする私を離してはくれなかった。

「うちのお袋の飯、うまいよ。
オヤジは若い子大好きだから、ウザいかもしれないけど。
家族体験からだなぁ…。幸い民宿だから、部屋だけはたくさんある」

「私、お手伝いするー!」

ハイ!と手を上げ、その勢いで離してもらった。

仲居さん?かっこよくね?
サスペンスドラマみたいじゃん。

むちゃ頑張っちゃう!

「…。手伝いは、しなくても良い」

「なんで!?」

「その爪じゃ、客が驚くでしょ…」

「!?」

これをなんとかする仕事も、残っていたか…。

「でも化粧は、そのままでいいよ。
そっちの方が、男が寄ってこなくて安心」


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