今宵の月は美しい【完】
体操着だから、すぐバレた。

戸川ちゃんはいつものように、無駄にヘラヘラホヨホヨしていた。

ああ、女の子だわ…。

これこそ、男子の求める女子像よね。

「麦茶飲みますかぁ?
それとも珈琲が良い?」

「いえいえ、お構いなく」

この保健室、喫茶店みたいなんだよな。

いつもお茶出てくるし。

「そう。
じゃあ先生暇だから、麦茶飲もうかなぁ」

他に、客はいないらしい。

丁度良かった。

「…あのさぁ、戸川ちゃん。
前に彼氏いないとか言ってたじゃん?」

「そうなのぉー。
もうダメよね、私この年でえ。…テヘ」

テヘ、と来たか。

そういえば戸川ちゃんの年は謎だが、妖精のようなその性格のせいか、ババアには思えない。

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