今宵の月は美しい【完】
どうして悪い事もしてないのに、お手伝いだよ!?

「…お手伝いしたら、煙草一本くれる?」

「どうしようかな」

一縷の望みを託し、私は言う事を聞いた。

でもいくら探しても、画鋲なんて入ってなかった。

「ないッス」

「下だよ、下の引き出し」

私は屈みこんだ。

うーん…
セロテープとかホッチキスは入ってるけど、画鋲?

「やっぱり、ないッス」

「どれ、…」

咥え煙草の中鉢が、膝をつき、横から覗き込んだ。

危ないなぁ、火が目の前だよ。

手で持ったらいいのに…、と思ってその手を見たら、画鋲の箱を持っていた。

「……持ってるじゃん?!」

ここにあるわけないっしょ!?

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