今宵の月は美しい【完】
「うん、画鋲は良いんだ。
煙草吸わせてあげようかな、と思って。
ここなら見えないから」

あ、マジで?

スゥと大きく彼は煙を吸い込み、そのまま煙草を持った手で、私の頬を取った。

うーん、やっぱりそうだよね…。

「ちゅ、ちゅうするの…?」

「うん」

美味しいはずなのに、よくわからない。

絡む舌の音だけが、近くで聞こえる。


それに重なるのは、コンコンと扉を叩く音。

嗚呼、離れたくない。

彼の背にまわした手を、優しく剥がされた。

もう、お終い?

名残惜しく見つめた中鉢の口唇が、上がった。

「体育サボって、なにしてたの?」

「!?…」

やべ、バレてる!!?

と、言うか。
呼び出して本当に聞きたかったのは、今のだろ…。

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