今宵の月は美しい【完】
※scene3『これは恋と呼べるのかしら』
来ても良いと言われたので、来ました。
夕方からママの彼氏がいらっしゃると言うので、いつもなら私は夜遊びのコースなのですが。
私の原付で飛ばして、家から50分の道程。
土曜日で道は空いているけど、中鉢のアパートは、けっこう遠い。
夜も怖かったけれど、昼間だと尚更ボロさが目立つ。
何でこんなところに、奴は住んでいるのか。
クラブで知り合う社会人のお兄ちゃんたちなんて、もっと華やかな生活してるよ。
カウンターバーのあるお洒落なマンションで、一人でダブルベッドとかで寝ちゃって、女子高生と一夜の恋を楽しんで。
みんなそうだと思ってた。
ドアフォンなんて洒落たものはなく、コツコツと薄い扉をノックしてみたけど、反応はなかった。
留守かよぉ?