今宵の月は美しい【完】
商店街まで買い出しに行き、調味料もそんなにきにせずすぐできて、美味いものと言ったら、カレー?

鶏肉、玉ねぎ、ニンジン、買い込んで戻ってきた。

「いいねぇ、こういうの」

キッチンと呼ぶのも悲しい水場の前に立つ私を、中鉢はニヤニヤ眺めていた。

「ふ、ふんっ!」

私もちょっといいな、と思ってしまったではないか。

彼氏が居た事はあるけど、一人暮らしだった奴はいない。

誰かの為にご飯を作るのなんて、初めて。

新婚さんみたい!

「煮込んでるから、ご飯炊けたら食べられるよ…」

私がそばで座りこむと、日経何とかという名前の私には関わりのないオッサン雑誌から、中鉢は目を上げた。

「学校と違って女の子らしいじゃない。
ご飯作れるなんて、びっくりした」

中鉢の方こそ、学校と全然違う。

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