今宵の月は美しい【完】
いや、もしかしたら。
服装以外は、違わないのかもしれないけど。

先生って、同じ人間だと思えないと言うか。

…男だなんて、見ていなかったというか。


先生が好き、なんて言ってる子が中学のころいたけれど、「あんなオッサンどこがいいの?」と思ってた。


それが一度意識してしまったら、これだ。

戸川ちゃんが、変なこと言うからだ。

どうしようと思いながらも、学校に行くのが楽しみじゃないか。

授業中に聞く声に、隣のクラスの黒板に残るあなたの字に、胸が騒ぐ。

「今日は泊れるの?」

「うん、ママの彼氏来てるから。
チューバチが駄目だったら、他行くよ」

今日、ここに来て冷たくあしらわれたら。
私は、どうなっちゃってたんだろう?

たぶん遊んでくれそうな年上の男の人に声をかけ、寂しい気持ちを紛らわせたりしちゃったんだろうか。

そうしてすぐ、あなたが優しくしてくれたことなんて忘れられる。

今までがずっとそうだったから、これからも大丈夫。

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