今宵の月は美しい【完】
「そんなこと言うなよ。ここにいて」

中鉢は大人なのに、先生なのに、私に言う言葉が嘘に聞こえないのは、なぜ?

ギュと抱き寄せられ、その瞬間、私の中の大人の中鉢が消滅した。

「早く二人で会いたかった」

ん?中鉢もそう?

「……。んじゃ、いる」

「ここでなら、いくらでも甘えてくれていいよ」

じゃあ、キスする?

学校じゃ、邪魔されちゃうから。

今なら二人きり。


大人は嫌いだけど、中鉢の大人のキスは好きとか。
私、可笑しいのかも。

唇を見つめたら伝わって、学校でした時よりもゆっくり味わうような、口付けが始まった。

休みの日の中鉢は、無精ひげ。

ザラリとしたその感触が面白くて、唇を離した後もしばらく頬ずりしていた。

「続きは、また夜ね」

今でも良いよ。

私、気持ちを伝えるのにこうするしか、方法を知らない。

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