今宵の月は美しい【完】
今夜も明るい月夜。

ズリズリと借りたサンダルを引き摺りながら、私は夜道を歩く。

手なんか繋いじゃって、ちょっと恥ずかしい。

終電も終わったこんな時間に歩いている人は他におらず、これは秘密のデート!

「なんか変な虫がいたぁ」

だって中鉢とカラオケ行ったり、ゲーセン行ったりは、どんなに好きになったって出来ない。

「歩きにくいッス…」

「だから、自分のサンダル履けって言ったのに」

照れくさくて文句ばかりの私に、あはは、と中鉢は笑った。

「抱っこしてやろうか?」

「ふ、ふんっ!
馬鹿じゃないの」

「ほんと頼子が素直なのは、服着てない時だけだよね。
そんなにギュッと掴まなくても、置いて行かないよ」

ハッ…、つい力がこもっていた。

なんか置いて行かれ慣れていて、思わず掴んじゃうんだよなぁ。

「それじゃ、お母さんに縋ってる子供。
大人はこうやるの」

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