今宵の月は美しい【完】
「大体そんなこと言ったら、中鉢くんが可哀想!」

「な、なんで」

「ヨリちゃんが停学になった時。
太秦さんと教頭の二人と、中鉢くん大喧嘩したんだからね!」

「へ?」

「煙草吸ってる現行犯でもないのに、停学なんて見せしめだ!って、職員室で怒鳴ってさぁ…。
静かな子だと思ってたから、先生驚いちゃった!」

そんなの、初めて聞いた。

あの時庇ってくれた大人なんていなくて、停学が解除されてから謝ってきたのは、中鉢だけだった。

「結局ね、…。あの二人に校長が言い包められちゃって。彼女の更生のきっかけになればー…、なんて話になっちゃって。
そうなると、誰も何も言えないの。
だから私も、本当はヨリちゃんには謝らなくちゃ。
あの時は、ごめんなさい」

「い、いいよ。そんなん、戸川ちゃん」

煙草を持っていたのは、事実だ。
担任に嫌われているのは、知ってる。

『後悔してる』と、中鉢は言っていた。

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