今宵の月は美しい【完】

翌日。
今、私は生徒指導室にいます。

「誓約書の意味から教えないとダメだったみたいね。はい、国語辞典」

呆れた声の中鉢は、ドサリと私の前に国語辞典を置いた。

「あのさぁ」

「国語辞典の引き方、習ったか?
さしすせ、な。せ、のところ。けっこうすぐだ」

「それは、わかるけどぉ」

ずいぶん使い込んである辞典だなぁ…。
所々折れてるし、線まで引いてある。

「読み上げて。
誓約、なんて書いてありますか」

「…『固く誓うこと。また、その誓い』」

「これはそれを書いた紙。誓約書と言います。
これは、おまえの字!
この爪が壊れたら、もう絶対新しくつけません、って書いてある…。嘘だったんだな」

そんな遠まわしに、苛めなくても。

なんかお化け屋敷にいるときと、中鉢態度全然違くね?

「昨日、外しに行ったのね」

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