今宵の月は美しい【完】
昨日も生徒指導室に呼びだされ、新しくした黒いスカルプネイルを注意されたばかりだった。
これが壊れたら、もう絶対新しくつけません!
という、誓約書まで書かされた。
でもそれが遠い昔みたい。
『この黒い爪、なんとかならんかなぁ…』
テーブルに置いていた私の手を取り、先に風呂を済ませて濡れた髪の中鉢は、爪を見ている。
こんなに近くなのに、遠くを見るような目だ。
スーツじゃないのを、初めて見た。
何でもない部屋着。
いつもはネクタイがキツく絞められている首元が開いてるだけなのに、妙にそわそわする…。
『なんとかしてどうする?ない方が可愛い?』
『うん』
『嘘吐き。可愛いなんて私、言われたことない』
ブス、ならあるけど。
これが壊れたら、もう絶対新しくつけません!
という、誓約書まで書かされた。
でもそれが遠い昔みたい。
『この黒い爪、なんとかならんかなぁ…』
テーブルに置いていた私の手を取り、先に風呂を済ませて濡れた髪の中鉢は、爪を見ている。
こんなに近くなのに、遠くを見るような目だ。
スーツじゃないのを、初めて見た。
何でもない部屋着。
いつもはネクタイがキツく絞められている首元が開いてるだけなのに、妙にそわそわする…。
『なんとかしてどうする?ない方が可愛い?』
『うん』
『嘘吐き。可愛いなんて私、言われたことない』
ブス、ならあるけど。