今宵の月は美しい【完】
「外しに行ったのぉ。…信じて」

信じて、と言われると弱いらしい。

中鉢は組んでいた腕を解き、額を押さえた。

「俺の為に、黒いのは止めてくれたわけか」

「うん。
黒いの何とかならんかなぁ、って言ってたから」

「いいよ、…ありがとう。
まずは一歩、前進したと考えよう。
次はこの、スカルプってのを止めようか」

「ジェルにしたら、いい?」

「知らないよ!
それも止めなさいとだけ、言って置く!」

しょんぼりだ。
中鉢、怒らせちゃった。

帰ろう。

泣きそうになりながら、トボトボ歩きだした。

でもすぐに、引きとめられた。

「待て、頼子」

「!?」

「…後学の為に、教えてくれる?
ジェルって、何が違うの?」

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