今宵の月は美しい【完】
なんでそんな、負けたって顔して笑うの。

いつもだったら、怒ってお終いだったじゃん!

「…まずスカルプっていうのは、これなんだけど。
元は、パウダーなのね」

「粉?それがこんな、カチカチに?」

中鉢は、不思議そうに私の爪を取り上げた。

「そう。アクリル樹脂なの。
いわゆる付け爪が、スカルプチュア。
ジェルは一般的にソフトジェルで、元は水飴みたいな…」

「ちょっと待って。…、メモする」

真面目に聞いちゃってるよ。

これから注意するときに使うのかなぁ…。
教えて良いんだろうか。

誰か、煙に巻きにくくなったりしないか?

「カルジェルとかバイオジェルって言うのは、メーカー名。こっちは自分の爪にコーティングする感じ。
メリットは、スカルプよりも爪が痛まない事。
デメリットは、長さを出したいときには向かないとか?」

「…ごめん。
やっぱり、ぜんっぜんわからない」

中鉢は手帳を投げた。

そりゃオッサンには、わからんよなぁ。

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