今宵の月は美しい【完】
抱きついた昼間と同じスーツからは、煙草とお酒の匂いがした。

「ジョニー、ありがとう。はい、これ」

「?」

中鉢は財布から千円取り出し、ジョニーに渡した。

「毎度。子守モ楽ジャナイゼ」

ヤレヤレと両手を肩まで上げ、ジョニーは出て行ってしまった。

「あいつ、今日牛丼持ってきてないよ?」

「うん、バイト頼んだんだ。
頼子が一人じゃ寂しいかな、と思って」

子守って、それかー!?

「超無駄だったんですけど…。
寂しいどころか、迷惑なんですけどあのガイジン……」

「頼子がこのうち、怖いって言ってたから…。まぁ、この辺り、本当に治安はあんまりよくないし。
ボディーガード代わりに」

確かに。泥棒入ってきて、ジョニーみたら逃げるよな。

「ご飯は?食べた?」

「うん、パン食べて来たー…あとね、荷物届いてたよ」

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