今宵の月は美しい【完】
「旅行じゃなくて、いつか一緒に行こう」

「連れて行ってくれんの…?」

それ旅行じゃね?

「うん、行きだけね。帰りはなし」

「へ」

「誰も俺たちの事知らないところでなら、一緒に住んで、デートして…が、出来るんじゃないかな…と」

言葉にしているうちに、あまりのリアリティーのなさに、中鉢は自分で気がついたみたいだった。

「…飲み過ぎたみたい、俺」

吹き出した、笑い顔。

一緒になって私も笑い、また抱きついた。

「行きたい!住みたい!」

超楽しそうですよ、それ!

中鉢、好きも言わないくせに、そんなことまで考えてたの!?

「楽しそうでしょ?
良いよね、そうしよう」

出来るわけないのに、この時私は本当に幸せでした。

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