今宵の月は美しい【完】
※scene8『真面目に悪い子しています』
すっかり油断していた。
家に着いたら、平日だと言うのにママの彼氏がいて、我が物顔で居間でふんぞり返っていた。
「おう、ヨリおかえり」
「ただいまです」
挨拶しないとキレるから、一応声をかけ、私は部屋に走り込んだ。
何でいるんだよ、ママはまだ仕事中だから居られても困る。
これからママが帰ってくるまで息を殺し、私が帰ってきた事を忘れて貰えるように、静かにしていないと!
平日はさすがに、中鉢のところ行っても悪いしなぁ…
遊びにでも、出てしまおうか。
着替えて久しぶりの濃いメイクをし、ソロリと廊下に出たら、台所を漁っていたらしいママの彼氏と、ばっちりと出くわしてしまった。
「どこ行くんだ?」
「友達のところ…」
飲んでいなければ、そこまで悪いオッサンではないのはわかる。