今宵の月は美しい【完】
笑うしかないって言うか、もう。

ケラケラ笑い続ける私の頭を強く抱き寄せ、中鉢は言った。

「ちょっと、落ち着け」

なんかやっぱり、変ですか?

「落ち着いてなくないよ?」

「このままでいい?気持ち良くしてあげるから。話しはそれから」

うん。抱いてほしいんです。

抱きしめられると、一人じゃないのがわかるから、とっても安心する。

そうじゃないと、私の薄い殻なんて壊れてしまう。

明るいのも嫌。
私は夜遊びの方が好き。

灯りを消そうと上に伸ばした手は、掴まれた。

「消してあげる。深呼吸、できる?」

掴まれた手の置かれたのは、中鉢の心臓? そこは肺?

合わせて息を吸って、肩に凭れたら引きつけのように笑うのは止まった。

怒っているみたいな、中鉢の顔。

ちょっと怖い。

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