今宵の月は美しい【完】
夜中のコンビニまでのデートは、定番になっています。
えっちのあとからずーっと中鉢は考え込んでいて、なんだか話しかけ辛い。
「アイス食べたい!ハーゲンダッツの高いヤツ。それ早食い競争したら、ゴージャスな気分になれない?」
「いいよ、やろう」
うーん…いつもなら「味わえ!」って怒られるのに、どうしてしまったのだろう。
「そうだ、さっき聞けなかったやつ教えてよ。
趣味と好きな食べ物を」
明日、陣野さんに教えてあげたい。
「知ってどうするの?」
「教えてあげたい子がいるの。
でも、誰だかは言えないです」
わかるかもしれないけど、私の口からは言えない。
「そう…。俺ね、先生になってから、生徒に本気で告白された事が、一度だけあるんだ」
「へ?」
なんだなんだ?
そんなこと聞いてないぞ。
「もうずいぶん前なんだけど、その時その子は1年生でさぁ。
軽い気持ちで『卒業したらね』なんて言ったら、本当に3年後、卒業して会いに来てくれた」