私だけの王子さま


そうだった。


私、委員長に話聞いてもらったり、励ましてもらった。


誰かを好きになる気持ちも、ボランティアの経験も…

全部委員長がくれた。



一度だけした電話。


その電話だって、きっかけをくれたのは麻智だった。
もちろん、委員長への恋心に気付かせてくれたのも…。



私は、何かあるとすぐに麻智に頼って。
慰めてもらえることを期待していた。


それが当たり前だと思っていた。


だから今日だって、こうして麻智と会っている。



考えてみれば私、親友にも、好きな人にも、何もあげていないんだ…。



それなのに、今までは知らなかった委員長の姿や、委員長の夢を知っては、浮かれて喜んで。



離れていきそうになると、不安になって…。



そんな資格は私にはないんだ。


だって、まだ何もしていないのだから。




そんな時、麻智が落ち着いた声で言った。



「ねぇ、柚季。

‘心の距離’ってさ、きっと相手に何かしてもらうだけじゃ縮まらないんだよ。

何かして‘もらう’ことと、何かして‘あげる’こと。
そのバランスが取れた時に、一番近付けるんじゃないかな?」





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