私だけの王子さま
相変わらず、ほとんど物がない部屋。
中を覗くと、本多さんはベッドから上半身を起こし、窓の外を眺めていた。
備え付けのテーブルの上には、何枚かの折り紙が置いてある。
それを不思議に思って見ていた私に、花梨さんが教えてくれた。
「あれ、本多さんの趣味なの。
折り紙がすごく上手なのよ」
「へぇ…」
本多さんは、私たちが来たことにまだ気が付いていない。
「どうする?声掛けてみる?」
花梨さんの問いかけに、私は迷うことなく頷いた。
だって、今日はそのためにここへ来たのだから。
「じゃあ、行こうか」
花梨さんはそう言うと、本多さんに近付いていき、ゆっくりと話し始めた。
もちろん、私もその後に続く。
「本多さん。
相原さんが来てくれたよ」
すると、本多さんは、窓から私へと視線を移し、にっこりと微笑んでくれた。
「柚季ちゃん。来てくれたのね」
いよいよだ。
私の決心を伝える時が、いよいよ来たんだ。
私は、ぎゅっと拳を握りながら、本多さんの側へと歩み寄った。