私だけの王子さま
クスクス…
その時、突然背後から聞こえてきた本多さんの笑い声。
「え…?」
私は、慌てて、本多さんを振り返る。
「…本多さん、私、何かおかしなこと、言いましたか?」
本多さんが、目を細くしながら笑っている。
予想もしていなかった状況に、私は戸惑いを隠しきれなかった。
「違うのよ、相原さん」
私の問いかけに口を開いたのは、本多さんではなく、花梨さんだった。
花梨さんは、そのまま私の横に並び、
ベッドのシーツを整えてから、ゆっくりと話し始めた。
「本多さんが笑っているのはね?
今あなたが言ったことが、一年前の雪也くんとそっくりだったからなの」
「一年前の委員長と…?」
その頃と言えば、ちょうど委員長が、このホームで、ボランティアを始めた頃だ。
「そ。雪也くんも、ここで本多さんと出会って、お孫さんの事故の話を知って…」
花梨は、そこまで言うと、本多さんを申し訳なさそうに見た。
きっと、事故の話題を出してしまったことに対しての配慮だと思う。
すると、本多さんは、「いいのよ」と2、3回首を縦に振った後で、
今度は自分の口で話始めた。
「…俺が、学さんの変わりになりますって、
言ってくれたのよ」