私だけの王子さま



クスクス…



その時、突然背後から聞こえてきた本多さんの笑い声。



「え…?」



私は、慌てて、本多さんを振り返る。



「…本多さん、私、何かおかしなこと、言いましたか?」



本多さんが、目を細くしながら笑っている。


予想もしていなかった状況に、私は戸惑いを隠しきれなかった。



「違うのよ、相原さん」



私の問いかけに口を開いたのは、本多さんではなく、花梨さんだった。



花梨さんは、そのまま私の横に並び、
ベッドのシーツを整えてから、ゆっくりと話し始めた。



「本多さんが笑っているのはね?
今あなたが言ったことが、一年前の雪也くんとそっくりだったからなの」



「一年前の委員長と…?」



その頃と言えば、ちょうど委員長が、このホームで、ボランティアを始めた頃だ。



「そ。雪也くんも、ここで本多さんと出会って、お孫さんの事故の話を知って…」



花梨は、そこまで言うと、本多さんを申し訳なさそうに見た。



きっと、事故の話題を出してしまったことに対しての配慮だと思う。



すると、本多さんは、「いいのよ」と2、3回首を縦に振った後で、
今度は自分の口で話始めた。



「…俺が、学さんの変わりになりますって、


言ってくれたのよ」



< 110 / 220 >

この作品をシェア

pagetop