私だけの王子さま
ここのホームの人たちは、本当に皆、いい人だと思う。
まだ二回しか会ったことがないのに、こうして気軽に接してくれる。
いきなりやって来て、ボランティアをさせて下さいなんて言ったのに、誰も嫌な顔一つしないんだ。
それどころか、‘来てくれてありがとう’とか、‘明日からよろしくね’とか、耳に入ってくるのは、嬉しい一言ばかりだった。
私は、もう一度、失礼しますと頭を下げた後で、事務所のドアに手をかけた。
その時。
ウィーン…
自動ドアの開く音がした。
「あれ?雪也くん…?」
花梨さんの声で、入って来たのが、委員長であることが分かった。
ドキンッ―――
その瞬間、私の心臓が、大きな音を立てる。
委員長に会うのは、3日ぶり。
夏祭りの帰りに、ぎこちない別れ方をして以来だった。
「雪也くん、今日は来られないんじゃなかったの?」
花梨さんが、窓口から顔を出して、委員長と話をしている。
私がいる位置は、ちょうど死角になっているため、委員長は、私の存在にまだ気が付いていないようだった。