私だけの王子さま
私が‘委員長’という言葉を出した途端、花梨さんの瞳が大きく開いた。
「相原さん…知ってたの?」
その質問に、私はゆっくりと首を横に振った。
「具体的には、何も…。
ただ、委員長の様子を見ていて、何かを抱えているような気はしていました」
その後、私はこれまでにあったことを、いくつか話した。
委員長が、よく家とは正反対の方向に帰っていること。
その理由を聞いた時の顔色の変化。
麻智から聞いた‘昔の俺と似ている’という発言…。
「…そんなことがあったんだ」
花梨さんは、全てを聞いた後でポツリと呟いた。
そして、少し眉毛を下げながら
「雪也くん、不器用だなぁ…」
と、心配そうな笑みを浮かべた。
しばらく、無言の状態が続く。
花梨さんは、何か考えているようだった。
そして―――。
「あのね?
雪也くん、普段は口に出さないけど、本当はとても寂しいんだと思う」
「寂しい…?」
「うん。
彼が何も告げていない以上、私の口から詳しくは言えないけど…。
彼ね、家庭環境があまり良くなくて…。
それに、とても辛い過去があるの」
花梨さんは、少し言いづらそうな様子を見せていた。