私だけの王子さま


委員長の辛い過去。
当然のことながら、私にはそれが何なのか分からない。


家庭環境が良くないという事実も初めて聞いた。


私って、本当に委員長のこと何も知らないんだ…。


その時、ふと思い浮かんだのはいつもの委員長の明るい笑顔だった。

だけどその隣に、この前作り笑いをした委員長の姿も蘇る。


2つの笑顔の間に、どのような事情があるのだろう…?


私は、委員長に近づくことができるの―――?



そんな私の思考を打ち破ったのは……
花梨さんの意外な言葉だった。


「でも、雪也くんも
相原さんと話すようになってから変わってきたのよ?」


「え…?」


「何ていうか…すごく優しい表情をするようになった。
それまでは、笑っているのに悲しそうだったり、
突然辛そうに顔を歪めたりすることもあったのに…」



――委員長が変わった…?

悲しそうな笑顔をしていた?

そんなの、見たことない――…。



「ねぇ。相原さんがボランティアをすることを言った時、雪也くんが真っ赤になってたの覚えてる?」


「あ…はい」


確か、宮田さんが委員長をからかって遊んでいた時だ。


「あんな雪也くん、初めてだった」



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