私だけの王子さま
抱擁
――ガタンゴトン…
――ガタンゴトン…
帰宅ラッシュの電車の中。
私は逸る気持ちを抑えながら揺られている。
委員長の家まではたったの3駅なのに、やけに長く感じた。
―――‘委員長の家、知ってますか?’
そう聞いた後、気が付いたら走り出していた。
花梨さんが書いてくれた、委員長の家の住所。
二つに折った紙切れを握りしめて、駅に向かってひたすら走った。
普段、電車に乗らない私は切符を買うのにも戸惑って。
改札に通す時も、焦りすぎてなかなか入らず、後ろのオジサンに迷惑がられた。
だけど、そんなことどうだっていい。
ただ今は、委員長と会って話がしたかった。
花梨さんの話を聞いて私の勘が働いた。
委員長はきっと今、一人で家にいる――…。
そう、直感したんだ。
本多さんには申し訳ないけれど、折り紙の練習はいつでもできる。
でも、委員長との間にある壁は、これを逃したらきっとますます高くなってしまう。
そうしたら、きっともう、乗り越えられなくなる―――。