私だけの王子さま
キィー…ガチャン…
私の言葉を聞いた後、委員長は何も言わずに身体を外に出し門を閉めた。
「歩きながらでもいい?」
落ち着いた声で、そう尋ねる。
私はコクリと頷き、歩き出した委員長の斜め後ろをついて行った。
通り過ぎる家々からは、夕飯の匂いが漂ってくる。
網戸越しに、トントンと聞こえる包丁の音。
楽しそうな家族の笑い声。
そのたびに、前を歩く委員長の背中が寂しさを増していくような気がして、思わず抱きしめてあげたくなる。
聞きたいことがあると言ったくせに、どう話を切り出していいものか迷ってしまう。
だけど、この沈黙が続くのにも……耐えられそうになかった。
「委員長…」
「相原、今日もボランティアだったの?」
私と委員長の声が重なった。
「えっ!
あ、うん。行って来たよ」
慌ててそれに答えたけれど、突然の問いかけに心臓がバクバクいっていた。
すると、再び委員長が口を開く。
「皆、元気だった?」
「…うん。相変わらず。知らない話とか聞けて本当に勉強になる」
「そっか…」
――何か、いつもの委員長と様子が違う。
声が…すごく弱々しかった。