私だけの王子さま
―――え…?
何が起きたのか、理解できなかった。
完全に思考が止まっている。
だって、目の前が見えない。
背中には、委員長の手の感触が伝わってくる。
もしかして私…
抱き締められてる―――?
「委員長…?」
ぎゅうぅぅ…!!
私の呼び掛けに、委員長の力がさらに強まる。
私は、戸惑いながらも、それに応えるように左右に下ろしていた両手を委員長の背中に回した。
委員長はきっと、
家の門の前に立っていた私を見た時点で、察していたのだと思う。
今日私が…
どうしてここに来たのかということを…。
――お互い言葉を発しないまま、ゆっくりと時間だけが流れていく。
離ればなれだった二人の影が、今は重なり合っていた。
「相原、俺っ…!」
しばらく経ってから聞こえた、委員長のかすれた声。
「俺…」
必死で何かを言おうとしているようだった。
だけど、その後が続かない。
‘無理はして欲しくない’
そう思った私は、委員長の言葉を遮るように言った。
「委員長、無理しないでいいんだよ?
私は、ここにいるから…」
それは、私がいちばん言いたかったことだった……。