私だけの王子さま
―――あれ?
いつまでたっても、アキラの手が触れることがない。
私は、瞑っていた目を恐る恐る開けてみた。
相変わらず、アキラは目の前にいる。
だけど、その視線は私ではなく、
なぜか委員長に向けられていた。
アキラは、ニヤニヤしながら指で委員長の帽子をクルクルと回している。
いつの間に奪ったのだろう。
もしかして、さっき手を伸ばした時…?
「アキラ!」
私は、帽子を返すように言おうとした。
だって、これは私の問題。
委員長は、何も関係ない。
関係ないはずなのに…。
私の声は、アキラの声によって、掻き消されてしまったのだ。
耳を疑うような、アキラの発言に――。
「久しぶりじゃん…雪也」