私だけの王子さま


「綺麗…」


次々と浮かび上がる花火は、夏の夜空によく似合う。


どこかで何かイベントでもやっているのだろうか?


私は、しばらくその場に止まったまま、輝く空を眺めていた。



そして、10回目の花びらが夜空を照らした時…。


ついに見つけたんだ。


花火が打ち上がる度に明るくなる駐車場。


そのいちばん隅っこにある‘空き’と書かれたスペースの車止めに、寂しそうにうずくまる委員長の姿を―――。



…こんな所に、いたんだ。


私は、一歩ずつゆっくりと、彼の元へと近付いて行った。



敷き詰められた小石が、歩く度にぶつかり合い、微かな音をたてる。


だけど、それは、花火の音にかき消され、委員長の耳には届いていないようだった。



ジャリッ…ジャリッ…



すぐそばまで到着すると、私は何も言わずに、委員長の隣の車止めに腰を下ろす。


その時、委員長の肩がビクッと動いたのが分かった。



俯いているため、顔はよく見えない。


だけど、その様子を見ていて、一つだけはっきりしていることがあった。



委員長……泣いてるんだ…。




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