私だけの王子さま



それから委員長は、少しずつ過去のことを話し始めた。


私は、その間もずっと、委員長の手を握り続けていた。


‘ひとりじゃないよ’

そう、伝えたかったから―――。




委員長は、小三の時に母親を亡くし、それからは父親と二人で暮らしていたという。


でも、小六のはじめに父親が再婚し、新しい母親が出来た。


最初は、優しい母親が来てくれたことを喜んでいた委員長だったけれど、その感情はすぐに打ち消されることになった。


その人は、いわゆる‘教育ママ’だったのだ。


学校から家に帰れば、遊びに行くことさえも許されず、ただ勉強だけを押し付けられる毎日。


その日に学校であったことさえも聞いてはもらえない。


一方、血の繋がった父親もまた、再婚してから仕事が忙しくなり、家に帰るのは、委員長が寝た後だった。


そんな狭い空間にいることは、まだ甘えたい年頃の小学生の子どもにとっては辛すぎで。


委員長は、毎日のように、声を押し殺して泣いていた。


だけど、そんな委員長にも一人だけ、自由をくれる存在がいたのだ。



それが、亡くなった母親の母親。

すなわち委員長にとっての祖母だった。



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