私だけの王子さま
アキラの行動に呆然としながらも、委員長は、再び急いでおばあさんの下へと向かった。
とにかく心配で心配で仕方なかったという。
それも当然のことだ。
おばあさんは、委員長にとって、唯一頼れる存在だった人なのだから―――。
「ただいまって、玄関を開けた時、いつもなら聞こえる‘おかえり’って声がなかったんだ。
だから、すごく、嫌な予感がして…」
そう話す委員長の顔からは、血の気が引いていた。
苦しそうに歪む表情。
頬を伝う涙…。
でも、委員長は今きっと、それを乗り越えようとしている。
少し前に同じような思いをした私には、それが分かるんだ。
「俺が…居間に入って、いちばん最初に目に入って来たのは…
真っ青な顔をして倒れていた、ばあちゃんだった…。
慌てて、救急車を呼んだけど、もう手遅れで…。
脳梗塞…だったんだ…」
委員長は、そう言った後、膝の間に、顔をうずめた。
そして、最後にこう付け加えたのだ。
‘俺が、殺したようなものだ’と―――。