私だけの王子さま
「あーもう!
だから、ごめんって!
急に…抱き締めたりして…」
最初の勢いは良かったのに、最後の部分だけ、やけに言い方が弱くなっていた。
ふと隣を見ると、いつも穏やかな花梨さんが、必死で笑いを堪えている。
状況が状況だけに、私は苦笑いをするしかなかった。
「ちょっと…委員長!
こっち来て!」
昨日のことを思い出して、急に恥ずかしくなった私は、委員長の袖を引っ張って、人気のない場所へと移動した。
私の背丈より少し高いくらいの観葉植物。
その影に隠れてから、私は委員長を掴んでいた手を放す。
すると、委員長が遠慮がちに尋ねて来た。
「相原、やっぱり怒ってる…よね?」
どうやら、委員長は女心というものが分かっていないらしい。
特別な事情があったとは言え、もし、いきなり好きでもない男の子に抱き締められたら、誰だって抵抗するはずだ。
でも、私は…委員長を受け入れたいと思った。
だから、思い切って腕を背中に回したのに…。
「怒るわけ…ないじゃん」