私だけの王子さま
「お前さぁ、相原柚季に告ったんだって?」
メンバーの一人が口を開いた。
私は、自分の名前が出たこともあり、ドキドキしながら近くの木陰に隠れて様子をうかがっていた。
「おぅ、昨日告った。
んで、今日の放課後返事もらうことになってんだ」
彼は、当時中1だった私より一つ上の先輩で、見た目は特に目立ったところはなく、普通だった。
でも、明るくて、優しくて――。
その性格から男女、学年問わずに人気のある人だった。
“……ずっと、いいなって思ってたんだ。
良かったら、俺と付き合ってくれない?”
“返事は明日でいいから!一日だけ、考えてみて欲しいんだ”
彼には、昨日そう言われていた。
私は、それまで告白されても付き合うことはなかった。
まだ、中1だったし、焦ることはないと思っていた。
でも、私は今日、彼にOKの返事を伝えるつもりでいた。
誰にでも笑顔で、すごく心の澄んだ人だと思っていたから――。
そんな私の小さな恋心は、
次の瞬間に、
打ち砕かれた。