私だけの王子さま
部屋の中には、私と本多さんの二人だけ。
さっき谷本さんの姿を見て、咄嗟に後ろに隠した折り紙のヒマワリは、手汗でふにゃふにゃになっていた。
「ごめんなさい、柚季ちゃん。
あの娘、2年経った今でも、まだ悲しみから抜けきれてないの」
「…いえ、全然気にしてませんから」
嘘だった。
本当は、谷本さんの‘後悔だけはしないように’という言葉が、頭の中で何度もリピートされている。
だけど、それを見透かしたように、本多さんが言うんだ。
「雪也くんのこと、考えていたんでしょう?」
「……」
私は、返事の代わりに、パッと顔を上げた。
その時の本多さんの表情は、本当に柔らかくて。
私は、初めて本多さんに会った時と同じことを感じた。
この人は、何も言わないでも、全てを包んでくれる人だって…。
「すみません。
私、夢を叶えるなんて、偉そうなこと言って…。
分かってるんです。委員長が大切な人だってこと。
でも、正直、先に進むのは無理かなって思ってる自分がいて…。
甘いですよね」
心の中にある、もどかしい気持ちを全て吐き出した。