私だけの王子さま
本多さんは、いつものように、しわしわの手で私の腕に優しく触れながら呟いた。
「…そんなところも、舞にそっくりね」
そして、諭すように、付け足したんだ。
「大丈夫。
ゆっくりでいいのよ。
私は、その時が来るまで、見守っているから」
この時、本多さんは一体どのような気持ちで言っていたのだろう。
私は、頷くことに精一杯で、気が付かなかった。
「…そのヒマワリ、柚季ちゃんが作ったの?」
「え…あ、はい。
でも、ずっと握ってたから、湿っちゃった…。
今度来る時、作り直しますね」
そう言って、鞄の中にヒマワリを戻そうとした時。
「いいわ。
それ、せっかく上手く出来たんでしょう?」
それを受け取った本多さんの表情が、さっきのように寂しそうだったこと。
だけど、そんな小さな異変に気付くこともなく、私は、本多さんとの時間を過ごしていたんだ。
これからもずっと、この場所で会えるって
信じていたから―――。