私だけの王子さま
委員長が前に出て来たため、私たちの距離は数十センチしかない。
だから、委員長の表情が細かい部分までよく見える。
今は…緊張しているのだろうか?
何かを言おうとしている唇が、フルフルと震えていた。
「雪也っ!
しっかりしろよっ!」
斜め後ろにいる宮田さんが呆れたように言うと、委員長は一瞬だけムッとしたように見えた。
でも、すぐにまた強張った表情に戻り、ようやくその口を開く。
「…今度、二人で何処か行かない?」
「へ…?」
委員長からの突然の誘いに、驚きすぎて身体が固まる。
今‘二人で’って…。
確かにそう聞こえた。
だけど、すぐには信じられず、私は確認のために、委員長の瞳をまじまじと見つめる。
すると、委員長は、キョロキョロしながら、小さな声で付け加えた。
興味津々の顔で、私たちを見ている宮田さんに聞こえないように…。
「…昨日のお礼。
何処に行きたいか、考えておいて」
私は、固まっていた首を、コクリと動かした。